パリ症候群
日本に東京、アメリカにニューヨーク、イギリスにロンドンがあるように、フランスにもパリという存在があります。大都市というのは、その国の政治経済を一点に集中させ、世界に向けて窓口のような役割を果たしています。そんな大都市というのは、便利だという利点の代わりに、 さまざまな問題を抱えているということも事実です。
〈パリ症候群とは〉
《20~30代の女性に多い、あこがれのパリで暮らし始めたものの、うまく適応できずに精神的トラ ブルを抱えている状態をさす。フランスに滞在して20年になる精神科医・太田博昭による命名。バブル経済時代には、仕送りは多いが学習意欲は低い女性がたくさん留学したことから、ことばの壁に跳ね返されて「パリ症候群」となる例が多かっ た。現在は転職志望の意欲的な女性が増えているというが、それでもトラブルを抱える女性は少なくない。フランス語を身につけて、ファッションや旅行、メ ディアなどの「パリらしい」仕事に転職したいと考えてパリに来たが、生活費は心もとなく、ことばも上達しないと「うつ状態」に陥ってしまう。小説、映画などの情報から心のなかで描いたパリの生活と現実とのギャップの大きさから、精神的トラブルを抱え込んでしまうのだ。妄想や幻覚など病的な状態に追い込まれてもパリへの思いは絶ちがたいというのが典型的な症状と、太田は指摘している。》 ヤフーJAPAN辞書より引用
では、パリの生活にどんなギャップがあるのでしょう。
映画の中で見たおしゃれでモデルのようなパリジャンが通りを歩いているに違いない。でも現実は、冷たくて無愛想。フランス人はもともとラテンのルーツをもち、とても気分が変わりやすく、すぐにカッとなるんです。そして、その中でもパリジャンはプライドがあまり にも高いためフランスの中でもちょっと特出しているのかも。
〈ヒステリック、プライド、横柄さ〉
・カフェで食事中、店内を叫び走り回る子供の母親に注意。「みんなが食事中に叫びまわって、何で親は注意しないんだ。ここはあなたのうちじゃないのよ。」と。するとその母親は逆切れ。すごい目つきで、「あなたのうちでもないわっ。」とものすごい顔で逆に怒鳴ら れてしまった。
・メトロの長い通路に設置してあるエスカレーター。前に小さな子供がいたので歩かずそのままでいたら、後 ろからこれまたヒステリックパリジャン女性の登場。「止まってたら、私が急げないでしょう。」と。子供を手で押しのけ突進。
・パリジャンは本当に攻撃的です。黄色いシャツを着て歩いている私に向かって、パリジャン高校生は「あ、中 国人。本当に黄色いわ」とクスクス後ろで笑ったり、老人が通りすがりに「また中国人がフランスにやってきたのか。」と差別し始める。レジで困っていた日本人の子どもが、後ろのおばさんに「あなたフランスにいるのにフランス語が話せないの?」と攻撃されているのはかわいそうでしたね。
・ラファイエットというデパートで買い物中。50代くらいの女性店員があるお客にサービスをしていました。 通路にいた私が邪魔だったらしく、わざと大きなお尻で私を突き飛ばしてきたのです(かなりショックでした)。いつもTシャツジーンズなので相手にしてもらえないんですよね。フランスに来る前、英会話学校で教えていた頃、60代と70代のおばあちゃん生徒が、「フランスに行ってきたんだけど、もう絶対行きた くないわ。デパートに行っても、服装で客を見るのよ。」と言っていたのも納得です。
・ボンマルシェというデパートでは、レジがどこにあるか分からなくて店員さんに聞いたら、「あそこにサイン がかかってるでしょ。」と鼻でフンと邪魔扱い。仕方がない私が気がつかなかったんだからと気を取り直し、レジで、「これプレゼントにしたいんです。」と簡 単なフランス語でお願いすると、店員1「リボンはいる?」と。すると私が答える前に後ろにいた店員2が「そんなのいらないわよ。」と。私がフランス語ができないと思ったのでしょう。そんなのほっときなさいよと言うような感じであしらわれてしまいました。
・こちらは主人の会社であった出来事。打ち合わせでドイツからわざわざパリにやってきたドイツ人。プロジェ クトの再確認をするのが目的だったのですが、その当事者であるボスが「手をけがしたから今日はいけない」とドタキャン。そのボスのためにやって来たのに、 会議は数分で終了。その後誰かが声をかけるわけでもなく、食事に誘うこともなく、そのドイツ人は去って行ったそうです。うちの主人がそれを見てものすごく罪悪感を感じ、上役に「僕がランチに誘いましょうか」と提案すると、そんな必要はないと却下されたそうです。
・ある日本人の知り合いで、彼がパリにはじめてやって来たときのことです。電話開設のため、フランステレコ ムのフリーダイヤルにアクセス。そこでは英語で対応してくれるはずなのですが、うまくコミュニケーションがとれず、そのオペレターが言った言葉は「日本大 使館に相談してみれば。バイ。」「英語が話せるようになってから、電話するように。OK? バイ」ですって。
・主人が銀行に解約のためのアポイントをするために電話。担当者は、仕事の終わりがけだったのか、「今日はもうアポイントは取れない。明日になったら、アポイントがあったことも忘れるから、もう一度かけなおして。」と。
・銀行では年配の女性店員に、私のフランス語が通じないフリをされひどく馬鹿かにされたことがあります。ただ金額を言うだけだったのに「分からない聞こえない」と無視され、でも周りの人にはちゃんと通じていたんですよ。この女性普段から態度の悪いのでよく知ら れているらしく、仕事中に私用の電話で大声でけんかしていたり、お客に命令口調なんです。この国ではお客様は神様ではありませんね。
・ホームステイでは、ある知り合いが、夜辞書を使って勉強していたら、「辞書をめくる音がうるさい。」と叱られる。
・うるさいと言えば、うちの隣人。エレベーターのドアを閉めると、うちの鏡が揺れるほどなんです。犬は深夜 遅くまで鳴いているし、あげくのはてには夫婦喧嘩。父親は近所でアンティークショップをやってるのですが、めったに開いておらず、ドアに「用があったら電話してください」とだけ書いてある。
エレベーター内で喫煙、飼い犬がアパートのエントランスで糞をしたり、これには他の住人も激怒。でも反省の色もない。そして騒音についてはもう警察には届けてあるのですが、何回言っても分からないようで、こんな張り紙を作りました。
「ドアは静かに閉める。23時以降テレビの音、犬の鳴き声は慎むこと。」
・パリジャン化していく自分が怖いと言っていた日本人もいたなあ。「最近自分の顔がだんだん怖くなってきてる。」と。
〈フランス人からみたパリジャン〉
・主人〈マルセイユ)、そして私たちの友達、一人はマルセイユ、もう一人はフラ ンスの内陸部出身の四人でパリについて会話をしていました。彼らにとってパリとは同じフランスでありながら外国のような存在なんだそうです。日本人の私が思っているように、彼らもパリジャンは冷たくうぬぼれが強く友達になりにくいと言っています。「パリジャン、あいつらは冷たいだろ」とか「なんでパリに住んでいるんだ」と聞かれたりもよくします。
・警視庁にて。ビザか何かの手続きを終えて帰ろうとするフランス人女性が一言「あー怖かった。」と。担当した相手がものすごい命令口調で横柄な人物。フランス人でさへこんなふうにもらしていました。
・近所のクリーニング屋さんで働く中国人女性。私が行くとすごい歓迎をしてくれるんです。同じアジア人だからかなあ。「フランスはどう?フランス人意地悪でしょう。」と話しかけてくれます。うちの主人と一緒に行く時も、私の方にしか話しかけてこない。
・ノルマンディーの旅について質問された答えが、「全く何もない。天気もよくないし、田舎。牛がそこらじゅ うにいるくらいで、ぜんぜん興味がわかないわ。私、パリで生まれ育ったから、パリが一番よ。」と(フランスフリーマガジンMetroより)。こんな態度 に、フランス人(パリジャン以外)は敵対心を抱くのだそうです。
・最後にこんな広告を見つけました。パリのメトロの広告です。
毎月多くのフランス人がメトロの運行を妨げています。もう少しお互いに尊敬し合い、和やか さを持ち、礼儀正しくなりましょう。破損、言葉の暴力、無意味な押し合いへし合いを少なくしましょう。そうすれば、毎日の道のりが快いものになるでしょう。メトロスタッフと乗客、全ての人々が関連しています。
どこにでも、こういうタイプの人間っていると思うのですが、パリはそういった人間に出会う確率が他の都市と比べてかなり高い気がするんですよね。そして夢を持ってここへやってくる日本人はその壁にぶつかり、うつになっていく人も。私も本音を言うとできれば外に出なくてすむならそのほうがいいなあと思うことも。外に出るといろんなところでイライラしてしまうから。
これからパリに行こうと考えている皆さん、現実を知ってきてください。いいこともたくさんありますよ。いい人もいます。でもそれだけではないということを。ガイドブックやパンフレットに載っている情報だけが全てではありません。他の国にも当てはまりますが、特 にこのパリという都市は。多少のことがあっても、『あ、パリだから』と割り切れる気持ちが大切です。健康であるために。そ して本当のフランスというのは実はパリではなく地方にあるのかもしれませんよ。フレンドリーなフランス人はたくさんいます。
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